かごしま文化財事典プラス

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文化財特集
鹿児島の歴史と文化財

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近代

明治日本の産業革命遺産

 19世紀、イギリスやフランス、アメリカなどは次々とアジアに進出してきました。日本の南端に位置する薩摩藩は、こうした国々と最初に接するところであり、アヘン戦争で清(中国)が敗れた後、毎年のようにイギリスやフランスの軍艦が領内に来航、大砲をちらつかせながら貿易をするように求めてきたため、緊張が高まっていきました。
 こうした中、1851年に島津斉彬が薩摩藩の藩主になります。幼い頃から海外の文化に興味を持ち、日本を外国に負けない強くて豊かな国にする必要があると考えていた斉彬は、造船や製鉄など、いろいろな近代化の取組を一気に進めました。これらは総称して、集成館事業と呼ばれています。斉彬の藩主としての期間はわずか7年でしたが、斉彬の死後も多くの人々がその志を受け継ぎ、それぞれの分野で活躍しました。そうした一人一人の努力がやがて近代国家日本をつくる大きな力となりました。

 この時期を象徴する我が国の近代化のさきがけとなった産業遺産は、今でも多く残されており、平成 27(2015)年7月に、九州・山口を中心とする8県11 市に分布する23の資産により構成される「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が世界文化遺産に登録されました。このうち、鹿児島県には国の重要文化財である旧集成館機械工場や旧鹿児島紡績所跡技師館(異人館)、国史跡である反射炉跡などを含む「旧集成館」と国史跡である「寺山炭窯跡」及び「関吉の疎水溝」の3つの構成資産があります。いずれも幕末に薩摩藩が近代化に取り組んだ集成館事業に関連するものです。